賃貸リフォーム前のアスベスト事前調査は必要?見積もり前の確認点

賃貸リフォーム前のアスベスト事前調査は必要?見積もり前の確認点

築年数の古い賃貸マンションやアパートで内装リフォームを検討するとき、「クロスや床を張り替えるだけならアスベストは関係ないのでは」と考えるオーナーの方もいるかもしれません。

  • 賃貸リフォーム前にアスベスト事前調査が必要になる場面
  • クロス張替え・床張替え・原状回復工事で確認したいポイント
  • 見積書で確認すべき調査費・報告・追加費用の見方

こんな賃貸オーナー向けの記事です

  • 築年数の古い賃貸マンション・アパートを所有している
  • 退去後のクロス張替え、床張替え、水回り交換を予定している
  • 見積書にアスベスト調査費用が入っていて、内容を確認したい

本記事では、賃貸リフォーム前のアスベスト事前調査について、必要になる場面、報告対象、見積もり前に確認したい項目を賃貸オーナー向けに整理します。(法律や安全に関わるため、最終判断は施工業者・有資格者・所管行政への確認が前提です)

注:アスベストは石綿とも呼ばれます。この記事では、読者に伝わりやすいように「アスベスト」と「石綿」を併記します。


⚠️ 小規模工事でも自己判断で「調査不要」と決めない

厚生労働省の石綿総合情報ポータルでは、エアコンの取付、壁紙の張替え、賃貸の原状回復工事などの小規模工事でも、施工業者が石綿使用の有無を調査し、一定規模では報告が必要になると説明されています。詳しくは厚生労働省「小規模工事等の着工前に必要な手続きについて」をご確認ください。

賃貸リフォーム前にアスベスト事前調査は必要なのか

結論からいうと、古い賃貸物件で内装リフォームを行う場合、工事内容によってはアスベスト事前調査が関係します。特に、壁・天井・床・配管まわりなど、既存の建材に手を加える工事では、見積もり段階で調査の要否を確認しておくことが重要です。

ここで大切なのは、「事前調査が必要か」と「行政への報告対象になるか」は別に考えることです。厚生労働省の石綿総合情報ポータルでは、解体・改修工事を行う際には、規模の大小にかかわらず、工事前に解体・改修作業に係る部分のすべての材料について、石綿含有の有無の事前調査を行う必要があると説明されています。詳しくは厚生労働省「工事の元請業者のみなさまへ」をご確認ください。

古い賃貸物件では「不要」と自己判断しない

アスベストは、過去に防火・保温・断熱などの目的で多くの建材に使われていました。厚生労働省の発注者向けページでは、2006年9月から石綿の製造・輸入・使用などは禁止されているものの、それ以前に着工した建築物等には石綿が使用されている可能性があると説明されています。

そのため、築年数の古い賃貸マンション・アパートでは、クロスや床の表面だけを見て「アスベストはない」と判断するのは危険です。古い下地材、接着剤、床材、天井材、配管まわりの断熱材など、見えない部分に関係する場合があります。

事前調査と行政への報告は別に考える

アスベスト事前調査は、工事対象となる部分に石綿含有建材が使われていないか確認するための調査です。一方で、行政への報告は、一定規模以上の工事に該当する場合に必要になります。

厚生労働省の説明では、たとえば建築物の改修工事で請負金額が税込100万円以上の場合、石綿事前調査結果報告システムによる報告対象になります。建築物の解体工事では、解体部分の床面積が80㎡以上の場合が報告対象です。詳しくは厚生労働省「石綿事前調査結果報告システムについて」をご確認ください。

事前調査

工事対象部分に石綿含有建材があるかを確認する調査です。報告対象に該当しない小規模工事でも、工事内容によって必要になります。

行政への報告

一定規模以上の解体・改修工事で必要になる手続きです。改修工事では、請負金額税込100万円以上が一つの基準になります。

オーナーにも情報提供や費用・工期への配慮が求められる

アスベスト対策は施工業者だけの問題ではありません。建物の発注者・施主であるオーナー側にも、設計図書や建築確認申請の副本など、石綿の有無を確認するうえで有用な情報を施工業者へ提供する配慮が求められます。

また、事前調査費用や、石綿が見つかった場合の除去等に必要な費用、工期、作業方法に関する発注条件についても、施工業者が法令を守って調査・工事できるよう配慮する必要があります。発注者側の考え方は、厚生労働省「発注者・施主」のページで確認できます。

どんな内装工事でアスベスト確認が必要になりやすいか

賃貸オーナーが注意したいのは、「大がかりな解体工事だけが対象」と思い込まないことです。内装リフォームでも、既存の建材をはがす、削る、穴を開ける、下地を露出させるといった作業がある場合は、アスベスト確認が関係しやすくなります。

クロス張替え・床張替え・原状回復でも確認対象になり得る

厚生労働省の小規模工事向けページでは、壁紙の張替えや賃貸の原状回復工事などでも、施工業者が石綿使用の有無を調査する必要があると説明されています。

たとえば、単に既存クロスの上から新しいクロスを貼る工事と、古いクロスや下地材を撤去して補修する工事では、確認すべき範囲が変わります。床も同じで、表面材だけを重ね張りするのか、古い床材や接着剤、下地まで撤去するのかで注意点が変わります。

水回り交換・配管・換気設備工事では建築設備も確認する

キッチン、浴室、トイレ、洗面台などの水回り交換では、壁や床だけでなく、配管、換気設備、点検口まわりなどに手を加えることがあります。建築設備の設置・修理・撤去を伴う場合、内装表面だけでなく、設備まわりの材料も確認対象になり得ます。

特に築古物件では、過去の改修履歴が残っていないこともあります。管理会社や前オーナーから引き継いだ資料がある場合は、見積もり依頼時に施工業者へ共有しておくと、調査範囲を整理しやすくなります。

間取り変更・下地撤去・穴あけを伴う工事は特に慎重に見る

間取り変更、壁の撤去、天井の解体、床下地の撤去、エアコンや換気設備の新設などは、既存建材に直接手を加える場面が増えます。このような工事では、アスベスト事前調査の範囲、分析調査の有無、調査結果報告書の提出方法を事前に確認しておくことが重要です。

見積もり前に確認したい工事内容

  • 古いクロス、床材、天井材を撤去するか
  • 壁・天井・床の下地を露出させるか
  • 配管、換気設備、点検口まわりに手を加えるか
  • 穴あけ、切断、研磨など粉じんが出る作業があるか
  • 過去の改修履歴や使用建材の資料が残っているか

見積書で確認したいアスベスト調査費と報告対象

見積書に「アスベスト調査費」「石綿事前調査費」「分析費」などが入っていると、オーナーとしては「本当に必要なのか」と感じるかもしれません。しかし、古い賃貸物件の内装リフォームでは、調査費用が見積もりに含まれること自体は不自然ではありません。

ただし、費目が一式で書かれている場合は、どこまで含まれているのかを確認する必要があります。見積書全体の基本的な見方は、リフォーム見積書全体の見方はこちらも参考にしてください。

調査費用は「書面調査・現地調査・分析調査」に分けて見る

厚生労働省の発注者向けページでは、石綿事前調査の費用項目例として、書面調査、現地調査、裏面確認調査、分析調査、総合調査報告書、諸経費などが挙げられています。

費目確認したい内容
書面調査設計図書、建築確認資料、メーカー情報、過去の改修履歴などを確認する費用
現地調査現地で建材、施工箇所、図面との違いを確認する費用
分析調査目視や資料で判断できない建材を採取し、分析機関で石綿含有の有無を確認する費用
調査報告書調査結果を報告書としてまとめ、発注者に提出するための費用
諸経費交通費、事務手続き、報告関連作業などが含まれる場合がある費用

見積書に「アスベスト調査一式」とだけ書かれている場合は、書面調査・現地調査・分析調査・報告書作成のどこまで含まれているかを確認しましょう。

税込100万円以上の改修工事では報告対象か確認する

賃貸リフォームでは、クロス・床・水回りをまとめて工事すると、請負金額が税込100万円以上になることがあります。建築物の改修工事で請負金額が税込100万円以上の場合は、石綿事前調査結果報告システムによる報告対象になります。

ここでいう請負金額は、工事費用だけでなく、材料・機器等の費用や消費税を含めた工事全体の合計金額です。見積書の一部だけを見て判断せず、工事全体の金額で確認する必要があります。

⚠️ 100万円未満なら何もしなくてよい、ではありません

税込100万円未満の改修工事では、報告対象に該当しない場合があります。ただし、報告対象でないことと、事前調査が不要であることは別です。厚生労働省は、報告義務がない場合でも事前調査は実施しなければならないと説明しています。

見積書に「別途」「調査後精算」がある場合の確認ポイント

アスベスト関連の見積もりで注意したいのは、調査後に費用が変わる可能性です。たとえば、分析が必要になった場合、石綿有りとみなして作業する場合、除去工事が必要になった場合には、当初の見積もりから追加費用や工期延長が発生することがあります。

そのため、見積書や契約前の説明では、次のような点を確認しておくと安心です。

  • 分析調査が必要になった場合の追加費用
  • 石綿含有建材が見つかった場合の再見積もりの有無
  • オーナーの承認前に追加工事を進めないルール
  • 工期延長が必要になった場合の対応
  • 入居募集や次の入居予定への影響

追加費用が発生する条件を契約前に整理したい場合は、追加費用が出る条件を契約前に確認する記事もあわせて確認してください。

オーナーが見積もり前に業者へ確認する項目

アスベスト事前調査は、オーナーが自分で建材を見て判断するものではありません。施工業者や有資格者が、資料・現地・必要に応じた分析によって確認するものです。オーナー側は、業者に任せきりにするのではなく、見積もり前に確認すべき項目を押さえておきましょう。

調査者資格と調査範囲を確認する

2023年10月1日以降に着工する建築物の解体・改修工事では、建築物石綿含有建材調査者など、一定の要件を満たす者による事前調査が必要です。厚生労働省の元請業者向けページでも、建築物については2023年10月から有資格者による事前調査が必要と説明されています。

見積もり前には、次のように質問すると確認しやすくなります。

業者へ確認したい質問

  • 今回の工事では、アスベスト事前調査が必要ですか
  • 調査は誰が行いますか。資格者名や資格区分は確認できますか
  • 調査対象は、クロス・床・天井・配管まわりのどこまでですか
  • 分析調査が必要になる条件は何ですか
  • 調査結果報告書はオーナーに提出されますか

調査結果報告書・掲示・保存の扱いを確認する

施工業者は、事前調査結果の記録を作成して3年間保存し、作業場所に備え付け、概要を掲示する必要があります。また、事前調査結果の掲示は、石綿含有建材の使用の有無や届出対象かどうかにかかわらず、すべての解体等工事で必要とされています。

厚生労働省のページでは、掲示は周辺住民と作業者の両方が見やすい場所に行い、掲示の大きさはJIS A3判以上と説明されています。現場の掲示や報告書の扱いは、工事前に確認しておくと、あとから「書類が残っていない」というトラブルを避けやすくなります。

着工前に渡す資料を整理する

オーナー側で準備できる資料がある場合は、見積もり前に整理しておきましょう。資料があるほど、施工業者は調査範囲や分析の必要性を判断しやすくなります。

  • 建築確認申請の副本
  • 竣工図・設計図書
  • 過去のリフォーム履歴
  • 床材・壁材・天井材のメーカー資料
  • 設備交換や配管工事の履歴
  • 管理会社が保管している工事記録

資料がない場合でも、築年数、過去の工事時期、わかる範囲の施工履歴を伝えるだけで、見積もり時の確認が進めやすくなります。

アスベストが見つかった場合の注意点

事前調査でアスベストが見つかった場合、通常の内装リフォームと同じ感覚で工事を進めることはできません。石綿の種類や建材の状態によって、届出、作業方法、費用、工期に影響する場合があります。

レベル1・2の場合は届出や工期に影響する

厚生労働省の小規模工事向けページでは、事前調査の結果、レベル1の石綿含有吹付け材や、レベル2の石綿含有保温材・耐火被覆材・断熱材が含まれている場合、工事開始14日前までに工事に関する計画の届出が必要と説明されています。

発注者は、地方自治体へ特定粉じん排出等作業実施届出書等を提出する必要がある場合があります。実務上は施工業者が説明や手続きのサポートを行うこともありますが、発注者側の義務に関係する部分があるため、必ず確認しましょう。

追加費用は「誰が・いつ・何を承認するか」を決める

アスベストが見つかった場合、分析費、除去費、養生費、廃材処分費、工期延長に伴う費用などが発生する可能性があります。見積もり段階では、金額だけでなく、追加費用の承認ルールを確認することが大切です。

特に賃貸物件では、次の入居予定や募集開始時期と工期が関係します。アスベスト判明後に工事が止まると、空室期間が伸びる可能性もあるため、事前に「調査後に再見積もりを出すのか」「オーナー承認後に進めるのか」を決めておきましょう。

入居者・近隣への説明が必要になる場合がある

アスベスト事前調査結果の掲示は、周辺住民や作業者が見やすい場所に行う必要があります。共用廊下、エントランス、住戸前など、賃貸物件では入居者や近隣住民の目に触れる場所で工事が行われることもあります。

オーナーとしては、施工業者や管理会社と連携し、工事内容、掲示場所、作業日程、住民への案内方法を確認しておくと安心です。必要以上に不安を煽る必要はありませんが、法令に沿って適切に調査・掲示・作業を行っていることが伝わるようにしておくことが大切です。

既存記事とあわせて確認したいリフォーム判断

この記事では、アスベスト事前調査に絞って解説しています。ただし、賃貸リフォームの発注判断では、見積書全体、追加費用条項、業者選びもあわせて確認する必要があります。

見積書全体の読み方は別記事で確認する

アスベスト調査費用は重要ですが、見積書のすべてではありません。クロス、床、設備、廃材処分、諸経費、管理費、工期などもあわせて確認する必要があります。

見積書全体の見方は、リフォーム見積書全体の見方はこちらで詳しく整理しています。本記事では、アスベスト関連の費目と確認項目に絞ってチェックしてください。

追加費用条項は契約前に確認する

アスベストが見つかった場合の追加費用は、契約後に大きなトラブルになりやすい部分です。「調査後に別途見積もり」「分析費は別途」「除去費は別途」などの記載がある場合は、どのタイミングで金額が確定するのかを確認しましょう。

契約前に追加費用の条件を確認する考え方は、追加費用が出る条件を契約前に確認する記事で整理しています。

業者選びでは安さだけでなく調査対応も見る

築古賃貸の内装リフォームでは、安い見積もりだけで業者を選ぶと、事前調査、報告、掲示、追加費用の説明が不十分なまま進んでしまう可能性があります。

業者選びでは、金額だけでなく、調査資格、報告書の提出、説明の分かりやすさ、追加費用の扱いを確認しましょう。賃貸リフォーム業者の基本的な選び方は、賃貸リフォーム業者を選ぶときの確認ポイントも参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

クロス張替えだけでもアスベスト事前調査は必要ですか?

壁紙の張替えや賃貸の原状回復工事も、小規模工事の例として厚生労働省のページで挙げられています。実際に必要な調査範囲は工事内容によって変わるため、自己判断せず、施工業者に対象範囲を確認してください。

請負金額が100万円未満なら何もしなくてよいですか?

いいえ。税込100万円未満の改修工事では行政への報告対象に該当しない場合がありますが、事前調査自体が不要になるとは限りません。報告の要否と調査の要否は分けて考える必要があります。

アスベストがなかった場合も掲示や記録は必要ですか?

事前調査結果の記録・保存や掲示は、石綿含有建材の有無や届出対象かどうかにかかわらず関係します。工事前に、報告書、掲示、保存の扱いを施工業者へ確認しておきましょう。

調査費用が見積書に入っているのは普通ですか?

古い賃貸物件の内装リフォームでは、書面調査、現地調査、分析調査、報告書作成などの費用が発生する場合があります。費目が一式になっている場合は、内訳と追加条件を確認してください。

オーナーが自分でアスベストの有無を判断してもよいですか?

オーナーが見た目だけで判断するのは避けた方が安全です。2023年10月以降の建築物の解体・改修工事では、一定要件を満たす調査者による事前調査が必要です。オーナーは資料提供と確認を行い、判断は施工業者や有資格者に確認しましょう。

まとめ:賃貸リフォーム前のアスベスト事前調査は見積もり段階で確認する

この記事では、賃貸リフォーム前のアスベスト事前調査について、オーナーが見積もり前に確認したいポイントを整理しました。

  • 古い賃貸物件では自己判断で不要と決めない:クロス張替えや原状回復工事でも、工事内容によって事前調査が関係する場合があります。

    特に2006年9月以前に着工した建物では、石綿含有建材が使われている可能性を前提に確認することが大切です。

  • 事前調査と行政への報告は別に考える:税込100万円以上の建築物改修工事などでは報告対象になりますが、報告対象でない場合でも事前調査が不要とは限りません。

    見積もり段階で、調査の有無、報告対象かどうか、報告書の提出方法を確認しましょう。

  • 見積書では調査費・分析費・追加費用条件を見る:アスベスト調査費が一式で書かれている場合は、書面調査、現地調査、分析調査、報告書作成のどこまで含まれるか確認します。

    石綿が見つかった場合の再見積もり、工期延長、追加費用の承認ルールも契約前に確認しておくと安心です。

  • 業者には資格・範囲・書類・掲示を確認する:調査者資格、調査範囲、調査結果報告書、掲示、保存、届出の有無を質問しておきましょう。

    安さだけでなく、法令に沿って説明・調査・報告できる業者かを見極めることが重要です。

アスベスト事前調査は、賃貸リフォームの見積もりに直接関係するだけでなく、入居者・近隣・作業者の安全にも関わります。見積書に調査費用が入っているか、対象範囲が明確か、追加費用の条件が整理されているかを確認し、疑問があれば着工前に施工業者へ確認しておきましょう。

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